戻る暗闇



死ぬのって


怖かった


小さい頃から


怖かった


幼いわたしにとって


死は この世との断絶


生まれる前にいた


真っ暗な土の中に


戻ることだった


誰とも繋がらない


暗闇の地中


そこへ戻ることだった



その恐れに支配されると


居ても立っても居られず


母の布団にもぐり込んだ


「また、死ぬこと考えたの」


と、笑われた



病気になって死を身近に感じたとき


初めて


死の恐れから


解放された


不思議だけど




今、死んで戻る暗闇は


土の中ではなく


夜の空の漆黒の闇だと


そう思っている



月の光と


星の輝きの


薄ぼんやりとした灯火を


遠くに見ながら


暗闇から


目をパチパチさせて


下界を覗いてる


他のたくさんの


暗闇の中の目たちと


一緒に



そう思っている




夜空を見上げる


父も母もあの人も


暗闇から


わたしを見つめてる


そう思う


そう感じている